IGOR Pro には、フィッティングで利用できる関数(組み込み関数)は、類似のソフトウェアに比べるととても少なく抑えられています。1変数のものだと、わずか 13 種類 です。この 13 種類の関数に含まれない関数形でフィッティングするには、ユーザ自身が定義する必要があります。今回は、ユーザ定義関数の簡単な例を紹介します。
▼ [おさらい] ミカエリスメンテン式
さて、酵素反応の教科書で必ず出てくるであろう、ミカエリスメンテン式 をご存知でしょうか?Wikipedia によると定義は
V = Vmax [S]/(Km + [S]) (1)
です。V は酵素反応速度、Vmax はその最大値、[S] は基質濃度、Km はミカエリスメンテン定数です。Km は Vmax/2 を与える基質濃度に相当します。研究者二人の名前を冠する式ですが、数学的に難しい式ではありません。導出のプロセスなどは専門書に譲りますが、与える基質の濃度が高くなると最初は直線的に速度が速くなりますが、ある程度を超えるとその効果は減少し、速度が飽和していくグラフになります。
今回はこの関数をユーザ定義関数として定義してフィッティングを行ってみたいと思います。
▼ ユーザ定義関数
IGOR Pro で関数を定義するには、まず何かしらのデータが必要です。今回は Table1 のデータを使ってみます。
Table 1 サンプルデータ
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Fig.1 Substrate と Velocity |
ミカエリスメンテン式は、変数が1個([S])、パラメータが2個(Vmax と Km)からなる関数です。Table 1 のデータを IGOR Pro に入力し、Fig.1 のようなマーカープロットを作成したら、解析メニュー>回帰分析 を開きます。
回帰分析のダイアログにはタブが4つ(関数とデータ、データオプション、係数、出力オプション)あります。まず、関数とデータのタブで、新規回帰関数ボタンをクリックします。
新規回帰関数という新しいダイアログが開きます。このダイアログには、回帰関数名、回帰係数、独立変数、回帰式の4つのボックスがありますので、それぞれ次のように入力します(Fig.2)。
- 回帰関数名:定義する関数の名称です。ここでは MM とします。
- 回帰係数:パラメータを定義します。Vmax と Km を入力します。
- 独立変数:x 変数を指定します。ここでは、S と入力します。
- 回帰式:実際の関数を定義します。f(S) = Vmax*S/(Km+S) と入力します。
テストコンパイル ボタンをクリックしてエラーが表示されなければ、回帰関数の保存 ボタンをクリックして関数とデータのタブに戻ります。
次に、以下のように操作を続けます。
- 関数のデータのタブで Yデータ と Xデータ をリストから選択します。Yデータが Velocity、Xデータが Substrate になります。
- データオプションのタブは特に操作する必要はありません。
- 係数のタブで、初期推定値を入力します。当たらずも遠からずな値を入力する必要がありますが、たとえば、Vmax に 100、Km に 30 などと指定します。
- 出力オプションのタブは特に操作する必要はありません。
ここまでの操作が終わったら、実行ボタンをクリックします。計算が実行され、履歴ウィンドウにフィッティング結果がレポートされ、グラフにフィッティングカーブが追加されます(Fig.3)。
今回のデータであれば、
Vmax = 115.8
Km = 23.4
程度の値が得られれば成功です。
▼ まとめ
ミカエリスメンテン式を定義してフィッティングしてみました。組み込みの関数との違いは、関数を定義する操作と、初期推定値を与える操作のわずか2点です。ふーん、案外簡単だなと感じてもらえると、うれしく思います。
井上@技術開発部でした。


