• 工場萌え
  • 飯島 聖宏(技術開発部)
  • 2010/01/06

前回前々回 と FlexPro のスクリプトをご紹介してきましたが、スクリプトを書くのが辛くなってきたので 今回はちょっと違った話題にしたいと思います。

FlexPro を使用されている、あるいは導入を検討していらっしゃるお客様には自動車などの輸送機器関連や電機機器関連の企業の方が多くいらっしゃいます。ご検討中のお客様にデモをご覧いただくため、あるいは導入されたお客様に使用方法をご説明するセミナーを行うため、あるいはカスタマイズに関するご相談や打合せなどで時々工場や工場に隣接した研究施設、オフィスなどに訪問させていただいてます。

歴史や伝統を感じる建物から建造されたばかりのピカピカの建物、工場のイメージ通りの様々なパイプがめぐらされ大きな煙突が突き出た建物から工場とは思えないようなお洒落な外観の建物などいろいろな建物を見ることができ、訪問する際の密かな楽しみになっています。特にタイミングが良いと見ることができる夕焼けから日没までの時間帯の工場は幻想的なまでの美しさを持っていて、後ろ髪を引かれる思いで帰路に着くこともあります。

近ごろは工場やコンビナートを主題とした写真集が発売されていたり、工業地帯を撮影した DVD が商品化されたり、工業地帯の工場の眺めの良い場所をめぐるツアーが企画されたりと「工場萌え」な方が増えているようですがそれに近い感覚なのかもしれません。

 

最近は「工場萌え」という言葉に象徴されるようにポジティブな話題が増えてきていますが、「工場」関連では数年前にはいわゆる「アスベスト問題」が話題になっていました。過去形で書いてしまいましたが、犠牲となられた方のご遺族の方々、今でも様々な症状に苦しんでおられる方には現在も進行形の問題です。事件や事故などでもそうですが、身近な人が関わっていないと犠牲になられた方を統計的な数値として受け止めてしまうことが多いですが、それぞれの方およびその周囲の方々の痛みや苦しみを見過ごしてはならないでしょう。

環境省の予測によれば建築物の解体によるアスベストの排出量は 2020 年から 2040 年頃にピークを迎えるそうです。解体などの作業にあたられる方の健康被害で言えば、こういった鉱物や化学物質によるものに加え、工具の振動による影響といった問題も見逃すことができません。

手腕振動による振動障害の新規労災認定件数は長期的には減少傾向にあるそうですが、それでも年間 300 件以上に上るそうです (「振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会報告書 (厚生労働省)」より)。こういった振動障害への防止対策として、これまでは振動の強さに関わりなく振動曝露時間を原則として一日二時間以下とすることなどの措置を講じられてきましたが、振動の強度および振動曝露時間を考慮する近年における国内外の振動曝露の評価を巡る動向を鑑み、また低振動・低騒音の工具が開発されてきて、これらの工具の普及を図り振動障害の防止に資するために見直しが図られています。このため「振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会」が 2006 年 3 月から 9 回に渡って開催されました。この検討会の報告書は 厚生労働省のウェブサイト で見ることができます。

この検討会でも注目されている EU の加盟国向けの指令 2002/44/EC は、機械的な振動曝露から生じる、あるいは生じる可能性のある安全と健康への危険から労働者を保護するための最低条件を定めており、加盟国は 2005 年 7 月までにこの指令に適合するのに必要な法律、規則、政令を実施しなければならないと定めています。

上記検討会の 資料 によれば、たとえば英国では、労働者や事業主が工具の振動の管理・保守などが出来ないことから、工具をレンタルしている会社やその組織 (EPTA) などが中心になり、工具メーカーから提出されている宣言値に基づき、1 日 8 時間の等価振動加速度として、振動暴露限界値(exposure limit value) 5 m/s2 rms を基準にして、交通信号 (Traffic Light System) と言う名のシステムを導入し、工具の振動の危険性と使用時間の簡易的な表示方法を考え、その表示を工具それぞれに行っているそうです。Traffic Light Systemの目的が下記に示されています。

 

そして、各工具レンタル会社は、工具メーカーの宣言値に基づいて、赤・橙 (黄色じゃないんですね) ・緑の分類を行い下記のような表を独自に作成しています。

 

この分類に基づいてラベルを作成し工具にラベリングして明示しています。

 下のように実際に工具に貼りつけられ、あるいは輪ゴムなどで取り付けられているそうです。

 

このラベリングにより、作業者や事業主は、それぞれの工具の危険性や、1 日の使用時間を容易に理解することが出来ると考えられます。

ここで、英国のレンタル会社が考えているTraffic Light Systemの振動工具の振動レベルと作業時間の関係には次のような関係を想定しています。

1 日の等価振動加速度レベル (A(8)) と工具の振動レベル (ahw) と作業時間 (T) の間に上記の式を考え、A(8)=5 を 1 日の許容できる振動の大きさの最大としています。そして、この値よりも振動レベルが低い工具であれば 1 日 8 時間の使用は可能であるという考え方に基づいています。そして、A(8) が 5 以上 10 以下であれば、2 時間の以内の振動工具の使用が可能であると考えています。そして、A(8) が 10 以上の場合は、使用に関して工具のリスクを再評価するとともに、使用方法に関して企業内の安全管理者に相談することになっています。また、上式の工具の振動レベル (ahw) は、下記の工具のハンドルの3軸振動値から決められています。

工具メーカーの宣言値が工具振動の 1 軸の場合は、その値を 1.4倍 して、3 軸値として、使用時間等を評価していました。これらの値は、ISO 等の試験規則に基づいて各メーカーにて測定評価され提出された工具から発生される振動値 (Emission Values) です。

上のほうでも触れましたが、これまで日本では振動工具の使用に関しては使用時間を 2 時間に制限するといった規制がされていましたが、この規制には振動工具の振動のレベルについての規制は含まれていませんでした。2 時間未満の使用であっても人体に影響があるような振動レベルの工具でも 2 時間まで使用できるし、逆に 2 時間を超えて使用しても影響が少ないような振動レベルが小さい工具でも 2 時間までに制限されてきました。

今回の検討会では工具の振動レベルを考慮した新たな基準を考える必要があると考えられると提案されました。これにより振動レベルの大きな工具の使用時間は短く、振動レベルの小さな工具の使用時間は長くなります。

検討会の結論は以下でした。

・ラベリングを実施することが望ましい。

・EU と同じ考え方の A(8) = 5 を 1 日の曝露限界値として 3 段階のシステムを取り入れる

・工具メーカーに宣言値を提出してもらう。そしてその値を 3 段階システムにあうような形でカタログ表示と工具に表示してもらう。

・零細企業で試験規則に準拠した測定が出来ない場合は ISO 5349-1 に準拠した方法で代表的な作業での振動値を測定していただき、そのデータを Emission 値と考える。

上記のようなシステムがわが国でも実施されると、労働者や事業者に対して、振動工具の使用限界を示すことができ、それを作業者や事業主が守ることにより手腕振動障害への罹患率を減少できると考えられる。

工具を使用される方の健康のために、また事業主の方にとっても作業効率が上がる可能性があるので実施されると良いですね。工具メーカーさんはちょっと当面大変かもしれませんが、低エミッション工具をアピールするチャンスになるかもしれません。

FlexPro の 人体振動解析モジュール を使用すると振動測定データから比較的簡単に A(8) 値を得ることができます。ISO 2631-1、ISO 2631-2、ISO 2631-4、ISO 5349-1、Directive 2002/44/EG に準拠してますので輸出製品にも適用可能です。工具メーカーのみなさん、だけでなく乗って使用するタイプの建設機器メーカーや輸送機器メーカーのみなさん、一度 FlexPro の トライアル版 をお試しください。

 

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